鳴釜神事研究家 和招(わじょう)

鳴釜神事は吉凶禍福を自らが感じて受け止めます

鳴釜神事 なるかまんじ

鳴釜神事(なるかましんじ)という特殊神事があります。これは童話で有名な桃太郎のもとになったとも言われる神話「吉備津彦命(きびつひこのみこと)の温羅(うら)退治」が、起源になっています。

昔むかし、吉備国(きびのくに)に温羅という名の鬼が悪事を働き、大和朝廷から派遣された吉備津彦命に首を刎(は)ねられます。ところが死んでもうなり声が止むことはなく困っていた吉備津彦命の夢に温羅が現れ、自分の妻である阿曽郷(あそのごう)の祝(ほふり)の娘、阿曽媛(あそひめ)に釜を炊かせて温羅自身が吉備津彦命の使いとなり吉凶を告げると言うので、そうするとうなり声も収まり平和が訪れました。このお話が今も続く伝統的な鳴釜神事の始まりと言われ、室町時代に都まで聞こえるほど有名だったようです。

神事は神官と阿曽女(あぞめ)の二人で奉仕をします。阿曽女が釜にお湯を沸かして、その上に蒸籠(せいろ)をのせています。奉仕は祈願した神札を竈(かまど)の前に祀ります。阿曽女は神官と竈を挟んで向かい合って座り、神官が祝詞(のりと)を奏上するころ蒸籠の中にある玄米を振ると、釜から鬼のうなり声のような音が鳴り響き、祝詞を奏上し終わるころに音は止みます。この釜が鳴った音の大小や長短によって吉凶禍福(きっきょうかふく)を判断しますが、神官や阿曽女は何も言いませんので、ご自身が感じたお答えを受け止めます。